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BOUND STRIKER 第2章 二振りの刃?

  • 2006/06/09(金) 23:03:23

BOUND STRIKER 第2章二振りの刃 第3節をUPします。


下の続きからどうぞ

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「ハァ、ハァ、ハァ…」
 蓮太郎は、ただただ広いだけの何もない部屋で息を切らしながら縦横無尽に駆けていた。
 手には譲り受けた、もとい貸し出された戦器<沙凪>。
 部屋の隅にはイングリットがお茶の入ったポッドとカップを持って、その光景を黙って見つめている。
 なぜこんな特訓じみたことをしているかといえば、話は二日前にさかのぼる。

サラミティアは戦えといった後、こう告げた。
「三日あげるわ。その沙凪を使って力を示しなさい」
「………」
 蓮太郎は恐る恐る沙凪に触れてみた。
「…!!」
 体に電気が走ったかのような感覚に襲われる。
 それはまさに女の子に一目ぼれをしたときの感覚にも似ていた。
 もっとも蓮太郎の場合、その娘には彼氏がいたし、年上だったことも会ってわずか一日で終わった恋であったが。
 そして、それと同時に懐かしさがこみ上げてくる。
 まるで10年来の親友と再会したかのような。
 その反応を見て、サラミティアは満足そうに微笑んだ。
「なかなかのシンクロのようね。ご苦労様イングリット。よくやったわ」
 イングリットは黙って頭をたれた。
蓮太郎は、もっと知りたいと思った。この友人を。このパートナーのことを
 だから、力を使った。沙凪の力を。速力強化を。
 だが、抑えられぬ好奇心と高揚感を持ったまま行った力の行使は、加減されることなく現時点における最大の力を持って発揮された。
 多少部屋が広かろうと、端まで到達するのはほんの刹那のこと。
 「ぶっ!!!」
 故に、そんなことをした蓮太郎は体ごと壁に突っ込んで、そのあまりの衝撃に気絶してしまった。
 そして次に目が覚め時には今いる部屋だった。

「はああああっ!!」
 蓮太郎が吼えた。
 無風だった部屋に風が吹くと、次の瞬間には蓮太郎の姿は消えていた。
 ただ、床を、壁を蹴る音だけが響いている。
 時間にして5秒ほど経つと、部屋の中央で蓮太郎が大の字に体を広げて倒れていた。
「くそっ…全然もたない…」
 イングリットは蓮太郎に近寄り、お茶を差し出した。
「ご苦労様です」
「ああ、ありがとう」
 蓮太郎は上半身を起こして、カップを受け取り、一気に飲み干した。
「…ふう。ちくしょう…」
「どうししたんですか? 確かに持久力という点においては、及第点といったところですが、あなたは沙凪をほぼ使いこなしている。いかに適格者とはいえ、わずか二日でものにしてしまうとは驚きです」
「そいうことじゃない」
 蓮太郎はチラッとイングリットを見たが、すぐに顔を下に向けて視線をそらした。
「こうして沙凪を使うことが<楽しい>んだ。海奈を人質にとられているも同然の状態で、これから何やらされるかもわからない状態で、俺は、こいつを使うことが、楽しくて、しょうがない」 
 蓮太郎は自嘲的な笑みを浮かべた。
「ああ、海奈に会いたいな…」 
 それから、しばし場に静寂が訪れた後、神妙な面持ちでイングリットが口を開いた。
「…それがあなたの特性、強さですか」
「何? それ」
 蓮太郎は顔を上げてイングリットを見やる。
「あらゆる状況下においても、事象を楽しむという思考ロジック、それに強化された適応力。経験をすべて自分の血肉に変える吸収力。あなたは恐ろしい人だ。何もしなければ何も出来ない人間である反面、何かをすればそのすべてを出来てしまう」
「わけわからんこと言うな。俺はそんなたいした奴じゃない。それに、家族の中じゃ、俺は落ちこぼれだ」
 イングリットは、何もわかっていないな、という風にやや呆れ顔になった。
「それはあなただけの認識でしょう。実際あなたはそこまで劣っているわけではない。それはあなたの経歴を見ればわかることです。そして、そうやって自分を「下」に置くことであなたは慢心も捨てている。あなたが本気になれば、こちらの世界を支配することも不可能ではないでしょう。あなたには戦器があるのですから」


―何を言っているんだ? こいつは…
「えらく持ち上げてくれるが、おれはいつもいっぱいいっぱいで、だましだまし日々を生きている。お前が思っているような人間ではないんだよ」 
 蓮太郎の言は無論、真実だ。彼にとっての。
 だが、イングリットはそうは思わない。それは、蓮太郎が自分に無意識に制限をかけているせいだと考えている。
「私は本気です。だからこそ頼もしい。そして怖い。あなたが、サラミティア様の、我々の助けとなるのではなく、脅威になることが。だから、あなたをここへ連れてきたことを、半分後悔しています。いっそ、あなたが妙な気を起こす前に、ここで殺してしまったほうがよいかもとすら思います」
 蓮太郎は、その言葉で鼓動が早くなる。
 イングリットの言葉に虚偽の念は感じられなかったからだ。
 疲労困憊の現在では、簡単に殺されてしまうだろう。
 いや、沙凪の力を一瞬でも発動させれば、この至近距離、一瞬で首を掻ききれる。
 蓮太郎はゆっくり、立ち上がると、ふらふらと部屋の扉まで歩いていった。
「今日はもう寝る。明日が、戦器所有者との戦いだからな。今日はゆっくりさせてもらうさ」
 蓮太郎は自分を心の中で叱責した。
 何を熱くなっている?何を考えている?俺が殺すのか?人を?無理だ。やめろ。落ち着け。お前は海奈を助け出して、元の世界に帰るんだろう?ここでイングリットを殺せば、元の世界に帰ることが面倒になる。彼女の戦器は、世界を飛び越える。元の世界へ帰るのに最も近いじゃないか。
 そうとも、今こうしておとなしくしているのだって、情報を集めるためだ。今、自分が戦器を持っているからって他の戦器所有者にはかなわないかもしれない。自分の力位置を見極めねばならない。
 蓮太郎は、自分の頭を廊下の壁に打ち付けた。
 鈍い音がしたが、加減はしていたので、たいしたことはない。
 目を覚ますには適度な痛さだ。
―くそ、イングリットの話は、どうしてこうもいらいらするんだ。さっきから自分の考え方が冷めているのがわかる。とにかく、寝よう。寝たら、きれいさっぱり、もやもやしたものもなくなっているはずだ。
 蓮太郎が、重い足取りで自分の部屋にたどり着き、ベッドのぼすっと倒れこむと、すぐに寝息を立て始めた。

 蓮太郎が特訓部屋を立ち去ってから、イングリットは後悔した。
 なぜ、あんなことを言ってしまったんだろうと。なぜ自分はあんなに熱くなったんだろうと。
 あんな態度でものを言って、彼が本気にしたら、自分の力を正しく認識したらどうするのだ?
 彼は自分を強く律している。
 だからこそ、異世界で、恋人を人質にとられている状態で、平然と戦器の特訓をしていられると思った。
 しかし、監視と身の回りの世話も兼ねて、彼のそばにいて、それは誤りだと気づいた。
 蓮太郎は、特訓の最中、<笑って>いた。本気で楽しんでいた。それが見て取れた。
 強く律しているから、平然としているわけじゃない。
―自分を解放し始めているから、平然としているんだ。
 元の世界では無意識に抑えていた自分。それが、段々とストレスになり、今回の異世界へとつれてこられるという事を契機にその抑えが利かなくなりつつあるのだ。
 空 海奈(くう かいな)を粗末に扱ってはならない。彼女は境界線だ、最後の。尾瀬蓮太郎に対する抑止力である彼女に何かあれば、彼は……。

 

そして明日、戦器所有者同士の戦いが始まる。人であって人でない者たちの戦いが。 
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